先日、村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を、二日間ぐらいかけて精読したのですが、引っかかっていた言葉がありました。
現実主義者のヴォルテールの、

「独創力とは思慮深い模倣以外の
なにものでもない」

という言葉です。これが引用され、話が展開するシーンがあるのですが、なんとなく意味は分かっていたのですが、はっきりと認識できていませんでした。

そこで最近、NHKの「SWITCHインタビュー」という番組で、漫画家、山本直樹が出ている回を見ていたのですが、番組のラストで、

「系譜を受け取る」ということの大切さ

を話していて、自身が学生時代から、色んな本や漫画を浴びるように読んできた経験を語っていて、

「オリジナリティって、
割と幻想に近いものがある」

「新人賞の審査員とかをやることがあるんだけど、毎回、「こういうもの、あるよ...(苦笑)」って言葉を寄せるんだよね。」

などと仰っており、たくさんのものを享受することの重要性(系譜を受け取ること)を、そこに説いていました。

これは、先述したヴォルテールの言うところの、「独創力とは思慮深い模倣以外のなにものでもない」ということと通ずると思い、

「オリジナリティ」
「自分自身のオリジナリティ」

なんていうものは、所詮、

「“既にあるものの

再解釈のようなものでしかない”」

のかもしれない、という風に解釈し、
「なるほど...。独創力、オリジナリティって、
その程度のことなのか。」と、腑に落ちた次第であります。

音楽家の坂本龍一氏が、2000年出演の情熱大陸で、

「完全なオリジナルなんてものは存在しない。よくそういうことを考えるけど、せいぜい、自分のものっていうのは5%ぐらいしかなくて、95%は既にある伝統のもの。」

と語っていたのを思い出しました。

これらを受けて、創作や、演じること(自主性)において、表出したものを客観的に眺める姿勢、謙虚な姿勢は、保ち続けなくてはいけないな〜、と思いました。

「何がオリジナルなのか?」

これは、非常に難しい問いです...。(^_^;)

                                             Yuki Ikeda.
昨日は、哲学という学問を取り扱って、
「死をどう捉えるか。」というお話を
させて頂きました。未読の方は是非、
下へスクロールして読んでみてください。

さて、今回は「心理学」です。
英語で「psychology」
 (psycho = 精神 心理   logy = 学問)

ちなみに、哲学は英語で「philosophy」
(philos = 愛する   sophia = 知)
「知を愛する」と書いて、「philosophy」

語源を辿ってみると、面白いですね。

僕が、心理学を学んでいて、「面白い!」
「役に立つ!」と思った最大のポイントは

普段、なんとなく悩んだり

なんとなく考えたりしていることが

科学的に分析できてしまう。


という点です。一つ、例を挙げみます。

暗い気持ちになっている時に、
暗い音楽を聞くとしっくりくる、
という経験はありませんか?
この状態を、心理学では、「気分一致効果」
と言います。暗い気持ちになっている時は、
その気分に合った、しっとりとした曲を
聞くと、心が休まるということなんです。
逆にいうと、暗い気持ちになっている時に、
明るい曲を聞くと、「逆効果」になります。
なので、これを端的に表すと、
「暗い気持ちになっている時は、その気分に合った、しっとりとした曲を聞けば良い。」
「暗い気持ちになっている時に、気分を高揚させようと、明るい曲を聞いてしまうと、余計に落ち込むハメになる。」
ということです。逆の場合も同じですね。明るい気持ちの時は、明るく、軽快な音楽を聞くと、良いのだということが言えます。
(気分一致効果は他にも、「記憶」する時の気分や、「判断や認識」を行う時の気分にも、効果が現れると言われています。)

こういう、「理論的なこと」って恐らく、
普段なんとなく、分かっていることだと思うんです。だけどそれを、心理学的なアプローチから、分析してみると、

明瞭に物事の本質が見えてくる。


のです。なんとなく分かっていることを、
「理論的に理解できている。」という状態に
落とし込む。これができるようになると、
日常の様々な問題を、分析された理論から
解決に導くことができるようになります。

さて、一方で、心理学を学ぶと
「心」という、抽象的で、よくわからない
だけどなんだか、ロマンチックなものを、
分析して(ある時には数値化して)しまうので
よくわからない、ということの良さが、
目減りしてしまうことは、考えられます。
なので、僕は冒頭で、「なんとなく
考えていることが、分析 “できてしまう”」
と書きました。分析して、理論化することで
、より良く生きることができるのが、「心理学」です。ただしそこには、

一見、複雑な人の心を(情緒的なものを)、

単純化してしまうという意味合いがある。


ということを、覚えておく必要があります。

今日は、「気分一致効果」という用語を取り上げ、「自覚できていないことを、分析すること。」について、語らせて頂きました。

これは、ほんの一つの例に過ぎないので、この記事を読んで、「面白い!」と思ってくれたら、心理学の入門書などを、読んでみてほしいです。
「シロクマのことだけは考えるな!/植木理恵  著」という本を、僕は入門書としてオススメしています。大流行している、アドラー心理学もオススメですが、大ベストセラーになった「嫌われる勇気」だけを読んでも、理解に達するのが難しいです。アドラー心理学を学ぶ場合は、合わせて続編の、「幸せになる勇気」も読んでみてください。

定評があれば、心理学についても、また書いてみようと思います!

                                   Yuki Ikeda.

皆さんは、「死ぬことが怖い」
考えることはありますか?
あるいは、「死ぬって、どういう
ことなんだろう」と考えることは
ありますか? 

大学で哲学を勉強していると、
「死に関して考えることがある」
生徒が、とても多いことに気付きます。
当然のことかもしれません。生きることと
背反する、人生最大のテーマだからです。
僕自身、10代前半の頃から、よく、
「自分が消えてなくなる」のが怖いと
思ったものです。「自分がいなくなる...?
なんだそれ...、じゃあ、今って何なんだ?」
と、パニックを起こしそうになったことも
ありました。分からない、ということは
とても怖いものだと思います。

それを乗り越えてくれたのが、

「哲学」という学問でした。


さて、一般的に、「人が死ぬ」
ということをイメージすると、
「消えて無くなってしまう」
あるいは、「魂が浄化されて、
輪廻転生される(生まれ変わりがある)」
などと、考えるかと思います。
こうやって考えると、怖くありませんか?

自分が「無」に帰したり、
「永遠の生」を繰り返すように
思ってしまうからです。しかしながら、
哲学の立場に立つと、「死は存在しない」
ということが、ある意味では言えるのです。

生きている限り、死ぬことができません。
生きている人間が、生きている以上、
死を経験することはできないのです。
つまり、生きている我々は、どこまでも
死ぬことができないのです。これは、
古代ギリシア哲学、エピクロスが
言っていることです。

「ない」自分を想像してみてください。
自分が「ない」はずなのに、「ない」
ことを想像している自分は、「ある」
あれれ、自分が「ない」はずなのに、
それを考えている自分は、
「ある」のです。どこまでいっても、
考えている自分が「ある」
「あり続ける」

死という概念が複雑になりました。
一般的に考えられるような、
「消えて無くなってしまう」
ということや、
「輪廻転生される(生まれ変わりがある)」
ということを、もっと疑わなくては、
いけなくなってしまいました。
ご都合解釈のように、思われる方も
いるかと思いますが、この仮説を
否定することは不可能です。
こういったことが、

「哲学をする」ということです。


「死ぬことが怖い」と考えることのある人、
「死ぬって、どういうことなんだろう」と
考えることがある人は、この記事を読んで、
少しでも、「死に対する考え方」が、
変わったんじゃないかと思います。

僕は、「死ぬ」ということの恐怖を、
哲学を学んで、精査する(詳しく調べる)
ことで、乗り越えていきました。

普段、当たり前だと思っていることを、
懐疑する(疑ってみる)だけで、見える世界は
全然、変わってきます。変わってしまいます。
面白いことだと、思いませんか?

以上、「死をどう捉えるか。」
というお話でした。

                                   Yuki Ikeda.